'乖人' は人種を問わず発生するが、総じて言える共通点としては、非常に端正な相貌をし
ていることが挙げられる。
知能、身体機能に優れるのみならず、非常にシンメトリーな形質を獲得しているのである。
染色体異常補正薬を投与される時期は、妊娠の最初期である必要がある。最も望ましいのは、
胚が形成される時点で、母体に2クールの投与がなされている状態だ。逆に、細胞分裂を始
めてから時間が経過していると、十分に薬効が現れない。母体のリスクも高まる。
そのような研究成果が早い段階で公表されていたから、先進医療として高額であるにも関わ
らず、各国の中流階級以上の人々は染色体異常補正薬をこぞって求めた。
月並みな表現ではあるが。まさに生命の神域を侵す、ヒトの傲慢が世界に蔓延している世紀
末であった。
最初に'乖人' として公式に記録されたのは、中国。発現したのは、日系人の子どもであっ
た。
日本人学校に通うひとりだったとされる。
子どもの名は判明していない。
授業中、クラスメイトと教諭を跡形なく虐殺した直後、その子自身も粉々に吹き飛んでしまっ
たからだ。おそらくは急激に覚醒して悪性粒子を放出したため、体内で暴走した悪性粒子に
より自爆したのだ。うすらに全貌が判明したのは、同様の事例が大陸の各地で発生して数年が
経ってからだった。